診療所便り 令和8年3月

冬のオリンピックでは劇的な逆転勝利や、骨折後でも出場する選手など、超人的な活躍を見ることができました。
選手を紹介した記事を読むと、故障を抱えて治療を受けながら出場していた方は多かったようです。高いレベルを要求されるので当然です。 
私たちの場合は運動の目標、目的が違います。メダルを目指したり、人からの注目を集める必要はありません。地道な運動で代謝を改善し、体力を維持する努力を続けるべきです。       


 SGLT2阻害剤の慢性腎臓病への効果 

SGLT2阻害剤は、血中の糖分を尿に排泄させる糖尿病薬です。体重を減らす作用があり、心不全や腎臓病への効果も報告されています。慢性腎臓病への効果が再検討されました(https://doi.org/10.1001/jama.2025.20835)。   

腎機能が低下した方を集め、尿に「アルブミン」が検出される方と検出されない方、糖尿病の有無などで効果を比べたところ、全体的に入院率を約10%、死亡率も914%程度減らす効果があり、それは糖尿病の有無、尿アルブミンの有無に関係していませんでした。 
つまり腎機能が低下したら、糖尿病の有無など関係なくSGLT2阻害剤を使え、ということになります。  

ところが実際に糖尿病でない人にこの薬を・・と言うと、「なんで俺が糖尿病の薬を飲まなきゃならんのか!」と、怒られたりします。私が信頼関係を築けていないせいですし、まだ腎臓を守ることが一般常識になっていないせいでもあるでしょう。 

腎臓を守ることに関しては、医療人でも関心が薄い傾向があります。腎機能低下や腎臓の萎縮を指摘しても、泌尿器科で問題ないと言われたから治療しないという方もおられます。腎臓を守ることの意義を啓蒙し、広く一般常識にする必要があります。 

ただし実際に治療するとなると、薬が増えて内服が面倒だし、治療代もかさみます。副作用も皆無ではなく、瘦せすぎたり尿の回数が増え過ぎる方もおられますので、最初は慎重に飲み出す必要があります。
    


 アナフィラキシーショックの薬 

急激なアレルギー反応によって血圧が低下するアナフィラキシーショックの時の対処薬に、新製品が出ました。「ネフィー点鼻液」です。この製品は注射ではなく、鼻の穴に噴霧する形で使います。 

従来品に「エピペン」という注射薬があります。ネフィー点鼻薬も性能としてはエピペンに近いレベルで効くようです。注射に抵抗がある方にも使いやすいと思います。この種の薬が必要なのは、重篤な食物アレルギーをお持ちの方です。花粉症やハウスダストのアレルギーに対して使う薬ではありません。アレルギーに対してではなく、血圧を上げる目的の薬剤です。  

アナフィラキシーに対しては、乳児期の食事内容の工夫や減感作治療が有効な場合もあり、アレルギー科を標榜する医療機関で治療を受けることはできます。ただしアレルギー科の専門医は、必ずしも救急治療の経験が豊富とは言えません。役に立たないと考えたほうが良いでしょう。発作が起ったら救急車を呼ぶべきです。 ネフィーなどは、病院に行くまで血圧を保たせるための薬と言えます。     

アナフィラキシー発作は誰にでも起こる可能性がありますが、予測は簡単ではありません。症状の程度が浴びる抗原の量に依存するので、事前の検査はあまり役に立ちません。軽い過敏性が存在しても気づいておらず、多量に接して初めて発症することになります。     

私自身もいちど発作を経験しましたが、それまで食物アレルギーの経験がなく、自分が発作を起こすとは思っていませんでした。最初に小さな発疹が出た時点でも、全身に拡がるとは予測できませんでした。 発作の経験のない人の場合、対処が遅れるのが当然です。     

妙な発疹が出た、下痢をともなう、気分不良をともなうなどの場合、何かのアレルギーで治療が必要かもしれないという認識を頭のどこかに置くようにすべきです。もし発作が起きたら、迷わず救急外来受診が原則です。 
   



  令和8年2月28日 up